応募作176

「みがわり人形」

春南 灯

 

「ごめんくださーい」
玄関に出てみると行商の女が佇んでいた。
「みがわり人形。千円でいいから」
そう言って、ぐいと押し付けて来た人形は、20センチほどの和人形。
断って粘られるのも面倒なので、言い値を女に渡す。
女は、にたりと嗤い、雨の街へ消えていった。
やれやれと人形を見ると、足の裏に小さく文字が書いてある。
「おおさか みがわり人形」
胡散臭いなぁ。
人形を下駄箱の上に置き、居間へ向かう途中、 箪笥の角に勢いよく左足の小指をぶつけてしまった。
痛みに堪えながら、一言呟いてみた。
「身代わりになって」
その瞬間、嘘のように痛みがひき、人形を見に行くと、左足が無くなっていた