応募作137
「怪談師見習い」
里真澄
孝一さんが私を初めて怪談会へ連れて来てくれはったのは、腐女子仲間とのオフ会の帰りやった。
怖がる私を、
「今日の会は参加型やから。自分のあの話、みんなに聞かせてやってや。絶対喜ぶで」
ゆうて、長い事説得してくれはりましたなァ。
死ぬ程怖かった私の体験談、拙い語りでも、みなさん、ちゃんと耳を傾けてくれはった。
ほんまに嬉しかった。
孝一さん、これからいろんなイベントに連れていってな、一緒にいこな、ゆうてた矢先やったのに。
犬鳴山トンネルで、ハンドル操作を誤って事故死するやなんて、運が悪すぎや。
「一人で凸してきて」
やて、無茶ゆうて堪忍な。
怪談が大好きやった孝一さんのためにも、うんと練習して、私、一人前の怪談師になります。
怖い話をようさん集めて、いつか百物語をやります。
百話語ったあかつきには、出てきてな。
な、孝一さん、待っててや…。ええな、孝一さん。