応募作108

「URL」

天野さん

 

 http://www.pref.osaka.lg.jp/
 URLをクリックすると、ごちゃごちゃとした画面が表示される。
 万博招致。環境施策。防災。福祉。振り込め詐欺に注意!エトセトラ・エトセトラ。
 右上には選挙の時期によく見る知事の写真もある。
 これは単なる大阪府の公式ホームページ。
 別にこのサイトを見たかったわけじゃなく、ここから目的のページを探していくのだ。
 「.jp」以下に、アテのある文字列を打ち込んでアクセスを試みる。
 けれども、あらゆるURLを試したところで「そんなページありまへん」とメッセージが表示されるばかりである。
 私はため息をついて、珈琲を口に含む。こうなると噂の真偽が疑わしくなってくる。

 大阪の「死」に関するホームページと聞いていた。
 行政機関の管轄するあらゆる事項に、各々統計や記録が存在するように、大阪府の管理するホームページのどこかに、府内で発生した「死」を記録したページがあるのだという。
 そこに掲載されているのは、死亡率とか死因とかそういうものではなく、たとえば死んだ人間の顔。死にゆく人間の顔。
 もちろんそんなものを行政が公的に管理しているわけがない。
 話によると、大阪府に勤めていたという一人の職員が秘密裏に作成したものらしい。
 彼が何者だったのか、何が目的だったのかは謎であり、今後も解明されることはないだろう。五年前、当の職員が突如失踪して、ひと月後ミイラのような姿になって発見されたから。
 だけどその後も、日々ページは更新されつづけ…
 オカルトマニアの間では有名な話らしい。
 別に私にそういう趣味は無い。
 ただ、友人から聴いただけ。
 大阪で死んだ人のなかに、会いたい顔があっただけ。

 もう少し頑張って探してみよう。
 私はそう思い立ち、文字列をいろいろといじってみる。
 そしてあるURLを入力したとき、不意に視界が真っ暗になった。
 目の前にあったはずのPCのディスプレイも見えない。
 背後から、誰かの視線を感じた。
 どうやら私は辿り着いてしまったらしい。