2017-11-07から1日間の記事一覧

応募作76

「大阪七墓」 剣先あやめ 祖先が記したと伝わる江戸時代に書かれた日記らしき書物を、夏休みの課題として読み解くことにした。くずし字辞典を片手に四苦八苦した結果、これを記したのは私とそう年齢の変わらない男性らしいということが分かり、親近感がわく…

応募作75

「小路の神社」 剣先あやめ 久しぶりに学生時代のメンツが3人そろったので、夜の難波へくりだす。1軒2軒とハシゴするうちに酔いも回り、気がつけば浮世小路という、並んで歩けないほど狭い場所にたどり着いた。「最近、こういう昭和っぽい造りの場所、増えす…

応募作74

「ライブカメラ」 宝屋 気象情報サイトで自宅周辺地域の天気予報を見ていると、近隣市のライブカメラがあることに気づいた。そこは大阪の郊外で遠景に山が見える以前の勤め先の懐かしく慣れ親しんだ風景だった。 ライブカメラの映像は30分の定点観測映像を1…

応募作73

「奇妙な夜に」 里上侑作 なんかこの部屋変じゃないと妻が言った。夜中に何か大きな音やゴソコソする音や笑い声が頻繁にすると私に言ってきました。大阪に引っ越しをしてきてまだ二週間しか経っていません。上下六部屋のアパート。私達の部屋は上の階の真ん…

応募作72

「栖」 里上侑作 大阪の都市部から少し離れた田舎町。 二台分の庭に雀や鳩、椋鳥が一本の太い木に咲く花や果実を求めてやってきます。この家の一人暮らしのお婆さんは鳥がやってくるのが嫌で嫌でしょうがなかったのです。まわりの近所の方々は「鳥の鳴き声が…

応募作71

「カクテル」 里上侑作 大阪の営業の出張帰り、東京行きの新幹線の乗る時刻まで時間があった。 時間潰しに駅近くの小さなバーに入った。薄暗いオレンジ色の照明、カウンター席が五席、サックスのジャズ曲が流れ、店内は落ち着きがあった。右の奥の席に一人の…