2017-09-26から1日間の記事一覧

応募作29

「遺りもの」 紅侘助 通路が所々狭くなっているので気をつけてくださいね。物が飛び出ていたりするで。 全部で万は下らないでしょうね。小さい物だと箸置きとか針と糸とか。大きい物ですと自動車まではいかなくても、自転車とか大八車なんかはありますね。流…

応募作28

「へぐひ」 最寄ゑ≠ 食べ歩きの一日を陸カフェの満喫セットで〆て、難波から新宿行きのバスに乗る。大たこも美味しかった。蓬莱も美味しかった。十三大橋を渡る頃、夜空にぽっかり空中庭園が浮かんでいた。ああ、お腹いっぱい。何だか眠くなってきちゃった。…

応募作27

「奇妙な実話2題」 GIMA 大阪・和泉市 2004年4月、「子供が犬に噛まれた」という119番通報が入った。通報したのは母親で、子供は生後4ヶ月の二男だった。診察した医師が男児の傷口を不審に思い、和泉署に通報。 調べの結果、母親が鋭利な刃物…

応募作26

「祭の夜」 三割丸菊 「ほら、あれが阿倍野ハルカスでこっちが梅田のスカイビルや」俺の適当な言葉に耳を傾けるわけもなく、タケは「次は、当てもンや!」猛ダッシュで駆けてゆく。「僕も!」頬っぺたを綿菓子でかぴかぴに光らせたしゅんも続く。興奮度マッ…

応募作25

「バス、来ぇへんで」 船生蟹江 暑い夏は嫌いだ。特に胸が蒸れてしょうがない。コンプレックスの大きな乳房を包む布も、胸の突出をどうにかしたくてできた猫背も、鞄を抱え込む立ち方も。全てが悪循環を生むものだった。「暑いなぁ。バス、はよ来んかな」 時…

応募作24

「鞄の持ち主」 船生蟹江 電車に乗っていると、大学生くらいの若い子が声をかけてきました。「あのぅ。おじいちゃん、ちゃんと家に帰れましたか」どういうことかと聞くと、どうやら私が荷物の整理をしようと椅子に並べていた革の小さな鞄を見て話しかけたの…