応募作162

「タコセン」

たいやき

 

突然私はタコセンと目があった。
大阪旅行で念願のタコセンを食べようとした時の事である。
タコ煎餅に挟まれていたはずの2個のタコヤキはいつの間にか人間の目玉になり大口を開けた私の顔をじっと見つめていた。
丸い目玉だけがそこにあるだけだがどこか悲しい感じがした。
食べられたくないからそんな視線で私を訴えてくるのだろうか?
一瞬食べるのを止めてしまおうと思ったが、ソースと青海苔の温かい出来立ての匂いが鼻に入り食欲がそそられる。
食べたい。
私は食欲に負け、目玉の視線を無視して大口を広げかぶりついた。
パキパキパキと煎餅の砕ける音とグニュっとした弾力が歯に伝わってきた。
私は構わずそのまま顎に力を込めた。
ブチュっと音がしたと思うと塩味のきいたドロっとした液体が口の中に広がっていった。
煎餅のパリパリとした食感と辛さがさらに食欲が進み顎を休める事なく一気に平らげてしまった。
あっという間の出来事だった。腹が満たされ不安を覚えた。食欲に負けつい食べてしまったが、今のは何だったんだろうか?
なにかまずい物を食べた気がしてならなかったが腹のほうは言いようの無い満足感に浸っていた。
考えてもしかたがない。美味い物は美味かった。私は串カツでも食べに行こうと店を探しに出かけた。