応募作140

「ホラー作家にインタビュー」

阿由葉ゆあ

 

 え? 私がホラー作家だから、実体験で心霊現象を沢山、経験してるでしょ? って?
 やだなー、作品はあくまで創作であって、私自身は霊感なんてないから、殆ど、心霊体験なんてないですよー。
 ええ? その数少ない心霊体験を聞かせて欲しい? いやー、私の実体験なんてしょぼい話しかないですよー。
 そうですか。そんなに言うなら一つだけ。
 昔、私が大阪に住んでいた頃のお話です。え? 大阪のどこかって? このご時勢ですから、実名を挙げると色々と問題があるので、そこは勘弁してください。
 その頃、私は一人暮らしをしていました。ある日、いつものように寝ていて、布団の中で目を覚ましました。時間? 真夜中だったんじゃないでしょうか。よくわからないんです。
 水を飲みに行こうと思って、布団から出ようとすると、出られないんです。何かが私の腕に絡まっていて、動けなかったんです。
 何が絡まっているのか、見ようとしました。でも、目が開かないんです。
 仕方がないから、腕に触れているモノの触感から類推すると、どうも、四本? の人間の手に掴まれているような感触なんです。そして、その腕は、方向的に布団の中から伸びているような感じで……。
 その後のことはわかりません。もう一度眠りに落ちたのか、気絶したのか、気が付いたら朝になっていて、体が半分、布団から落ちた状態で目が覚めました。以上です。
 え? しょっぼい体験ですね、って? もうー、だから、聞いてもしょうがないって最初に言ったのに、無理に語らせるから。ほらー!
 えー? 親父ギャグつまらないって? やかましわ! ところで、私、今、めっちゃ気になっていることがあるんですけどね。
 今、時刻は真夜中。私は一人暮らし。そして、私の目の前にいるアナタは半透明。私は現在、念願の心霊体験を絶賛、体験中ってことでいいのでしょうか?
 いや、嬉しいです。ホラー作家になると心霊体験が出来るって聞いたんで、私はホラー作家になったんですから。