応募作138

「どうしよう」

里真澄

 

 どこにもあるよな怪談話
 書いたワナビを笑わば笑え
 浪花がテーマの八百文字
 月も知ってる俺らの意気地

 あの手この手の思案を胸に
 安アパートで今年も書いた
 彼女もいない女房もいない
 棚に並んだ怪談本

 いつかは本を出すんだからな
 なにがなんでも書かねばならぬ
 尻に火がつく 
 通天閣
 おれの闘志がまた燃える

 ……って、また聞こえるし。こんなに毎晩はっきり聞こえるのに、まさか隣が空き部屋やなんて思わんかった。家賃は安いし、駅近やし、この声が辛気臭いことさえ辛抱すればええことなんやけど。  
 お札張ったりお祓いしてもろたりして、下手に刺激することになってもなぁ。
 引っ越したほうがええんかな。
 かなんなぁ。
 どうしよう。