応募作132

ザ・フライング・ダイナソー
綾野祐介

 

 大阪市此花区にあるUSJは今や押しも押されぬテーマパークの雄だ。

 最近では、プテラノドンに背中を掴まれたような態勢で空を駆け巡る「ザ・フライング・ダイナソー」が人気になって長蛇の列ができている。

 私は絶叫物は苦手なので、その手のものは避けて別のアトラクションを楽しんでいた。

 ふと、頭上で音がしたので見てみると「ザ・フライング・ダイナソー」が通過したのだが乗客が見当たらなかった。

「なんだ、誰も乗せてないな。」

 一緒に行った友人に声をかけると、その友人も同じものを見上げていたが何も言わず黙っていた。

 一通り楽しんでの帰り道。ふと友人が話し始めた。

「さっき、誰も乗ってないコースターが動いてたろ?」

「ああ、あれ変だったよな。」

「実は乗ってたんだよ。」

「えっ?」

「だから、乗ってたの。」

「誰が?」

「俺みたいな者にしか見えない人が。」

 それ以上は聞けなかった。