応募作99

「重要機密」

剣先あおり

 

 トムクルーズ主演の「宇宙戦争」が公開されたとき、大阪中が騒然となったのは「大阪では(トライポッドを)何体か倒したらしいぞ」というセリフだった。
 何故、東京ではなく、大阪なのか。どうしてスピルバーグがその理由を知っているのかが問題視されたからだ。一説にはイルミナティと噂されるスピルバーグだが、一般人には知りえない大阪の秘密を知っていることから、この噂もあながち嘘ではないらしい。
 大阪が呪的大衆都市であることは広く知られていることであるが、同時に日本列島の霊的防御の要になっていることは国防上の秘密事項となっている。
 古くは安倍晴明を生み出した阿倍野のように元々霊力の強い人間が多く生まれる土地柄であったが、それは京都の結界に入れずに敗れた物の怪たちが大阪に溢れてくることに対抗するために大阪人が進化した結果であり、おっさん、おばはんという無敵の霊的戦闘民族を生み出した。おっさんは酒を飲みながら、一瞬で笑顔からぶち切れモードになり、容赦なく殴る蹴る等の物理的攻撃を物の怪に加えることを得意とし、おばはんに至っては喋りだけで殆どの霊を除霊出来る。ヒョウ柄などの派手な服装は呪力を高めるタトゥーの代わりだし、アメは邪気を払う重要なアイテムである。テレビで彼らが面白おかしく取り上げられているのは勿論、国家規模のカモフラージュに過ぎない。
 大阪に南港や関西空港があるのもおっさん、おばはんの力で海外からの邪悪な存在を水際で食い止めるためであり、神戸や羽田、成田などにも極秘裏に指導に行っている。
 邪悪な読者諸兄におかれては不要不急の来阪は控え、万が一の場合は祓われることのないよう十分注意を喚起する次第である。