応募作74

ライブカメラ

宝屋

気象情報サイトで自宅周辺地域の天気予報を見ていると、近隣市のライブカメラがあることに気づいた。そこは大阪の郊外で遠景に山が見える以前の勤め先の懐かしく慣れ親しんだ風景だった。

ライブカメラの映像は30分の定点観測映像を1分ごとの静止画像が連写のようにリピート再生していくもので、天気の移り変わりがわかるものだ。

時々雲の様子などを見るのが楽しく、急な天気の変化などはより時間の経過がわかり気晴らしになった。

その年は台風が連続して接近し住んでいる地域にも警報が出た。ふと夜中に気になってライブカメラを見ると、スマートフォンには強い雨粒が打ち付け強風で小刻みに揺れるカメラの映像が映し出された。数分後、ビルの端から白い点が近づいて果物が高所から落ちて潰れるようにベシャっとカメラにぶつかり潰れたように見えた。

何がぶつかったんだろう?
疑問に思い画面下のボタンで拡大すると、スマートフォンの画面いっぱいに白く発光した線がはっきりわかる年老いた男の姿があった。男は深く刻まれた皺に怒りながらわめき散らしカメラにぶつかるようにグシャリと潰れ、シャワーで流したように雨粒に流されて消えた。その後画像は何度もリピート再生して気味の悪い映像が映し出された。

家族に見せようとしたら一度だけ映った後に「調整中」という画面に切り替わりその後映し出されることは無かった。

その後も何度かライブカメラの映像を見に行ったのですが、昼間は何事もなく映るにもかかわらず、夜には「調整中」の文字が映し出された。暫くすると定点観測で映す位置が変わってしまった。

怪異好きの友人に話したところ暫く考えてからそれはおかしいと説明を受けた。

友人いわく「ライブカメラはそもそも小型のものが多いから、画面に人の姿がぶつかるということは体長数センチの小さな人でないとあり得ないじゃないか」

ではあの怒り喚きながら潰れて消えた人影は何だったのか?
あれ以来、定点観測のライブカメラは以前とは違う場所を映している。