応募作34

環状線

泥田某

 この駅だけやないけどな。まあここでもいっぱい死んだなあ。ちゅうか、いっぱい死ななアカンかったんやろなあ。うん、終わりにするためには、いっぱい死ななアカンかったんや。引っ込みつかんからな。いや、そら、死ななアカンかったっちゅうのも無茶な話やけど、そういうのはほら、死ななアカンほうが決めるこっちゃないやん。まあ建前としては、不幸にしてお亡くなりに、っちゅうとこやろけど、そんだけの数が死なんかったら、そのくらい死ぬまで続けたやろから、つまりそのくらいは死ななアカンかった、ちゅうことやで。えっ、違う。違うてか。尊い犠牲、てか。ほな、ためしにそんだけの数が死ぬっちゅうのがどんだけのことか、いっぺん数えてみ。いやいや、数字だけではわかりにくいやろ。そやから、ほら、ここに転がってるのん、これひとつずつぜんぶ数えてみたらええがな。指が足らんかったらなんぼでも貸すで。猫の手、てなケチくさいこと言わんわ。ちゃあんと人の手でも足でも貸したるがな。そこらにぎょうさんあるやろ。いやいや、遠慮いらんて。どうせもう使うことあらへん。ああ、そら千切れたりとんだりしてちょっと足らようになってるのもあるけど、そこはほれ、数でおぎなわんとな。そういうこっちゃろ、こんだけ死ななアカンかった、ちゅうのも。うん、数やねん。ひとつふたつでは値打ちがない。値打ちやと思われへん。そやから数がいるんやろなあ。さ、数えてみ。えっ、そうかあ? できると思うけどなあ。でけへんの? 数えるだけやで。でけへんの? よおかんじょうせんの? はは、みな、そない言うねん。うん、それでやな。それでこの線路のことを、かんじょうせん、って言うんやで。いや、知らんけど。