応募作2

﹁かす﹂
侘助
 何や︒シケた面して︒また博打に負けたんかいな︒尻の毛までむしられて鼻血も出ぇへんのんか。ほんまにクソやな自分。分かっとるはずや。博打で負けた銭が博打で取り返せるわけないやないか。何べん同じことしたら覚えられるんや。そんなやから会社も首になって女房子どもにも逃げられるんや。ええ加減サルでも覚えるわ。サル舐めんなや。
 言いたいことがあるんやったら言うてみぃ。ほんまにしょうもない。街金の借金はなんぼになったんや。ほんまに返せるんか? あっちこっちから借りまくって利息返すんも追いつかへんのやろ。毎日毎晩、ああ、クラッチバッグ提げたこわいお兄さんらが来ぉへんやろか、どこに逃げよかいうて怯えとんのやろ。返せん金借りる奴がどこにおんねん。
 いっそのこと強盗でもしたろか思てんのやろ。クズや。お前は人間のクズや。いいや。クズなんて言うたらクズに申し訳ない。カス。お前は人間のカスや。楽して稼いだろ、それがあかんかったら人から盗ったれ。何ちゅう奴や。ほんまにカスやな。カスオブカスちゅうやつや。お前のことやで。このカス。
 ええか。目ん玉かっぽじってよう見てみぃ。かすはかすでも、このうどんに入っとるかすはな。お前とはえらい違いや。牛の腸みたいな放るようなもんでもな。油の中でじぃっと辛抱しとったら、外はカリカリ中はもちもちに変わりよる。うどんに花を添えられるようになるんや。世のため人のためや。一つも辛抱できへんお前とは性根が違うとるわ。
 おいカス。もうお前みたいなもんに生きとる価値なんてあらへん。早う去ね。去んでまえ。生きとってもしゃあないやないか。去ね。何しとん。去にさらせや。去ね去ね去ね去ね去ねいねいねいねいねいんで
まえ――

かすうどんの丼からぼそぼそと低く囁く声が聞こえて来て、一向に箸が進まない。
やかましいわ。ボケ。カス。