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第二回「大阪てのひら怪談」佳作受賞作品

作品タイトル:Reflection 
筆名:高家あさひ

 

ご趣味は何ですか? 写真? 私も実はカメラを持ってるんですよ。
 私のカメラは大阪で買ったものです。はじめて手に入れた一眼レフカメラ。だけど、そのころの私はひとり暮らしで、アルバイトをしながら授業に通う貧乏学生でした。だから、そのときで既に十数年落ちだった、エントリーモデルの中古品です。当然、デジタルではありません。大阪駅前の量販店を横目に、西梅田の駅の近くの地下街に入っているちいさなカメラ屋まで、現物を見に行ったのを覚えています。ファインダーの中にホコリが入っていて、セットになっているレンズのズーム環も回すとなんだかざらざらして、決していい状態ではなかったんですが、とにかく安かった。それが私の精一杯でした。
 けれども、それからわりとすぐ、カメラを使う暇もなく私は大阪を離れなければなりませんでした。ひとりで住みだしてから発症した睡眠障害が悪化して、親元に連れ戻されてしまったんです。ふたたび夜に、よく寝られるようになったのは最近のことです。夜、私はカメラを抱いて布団に入ります。薬を飲んでいるからなのか、夢はまったく見ません。黒い螺旋に、ぐるぐる引き込まれて眠りに落ちます。一週間に一度くらい、フイルムを巻き上げて現像に持っていきます。ほとんどのコマは真っ暗だったり白く飛んでいたり、意味のあるものは写っていません。一本まるまる、そうなこともあります。でも、たまに、鮮明な画像がプリントされてくることがあるのです。
 これが、今日できてきた中の一枚です。阪堺電軌のワンマン車。橋を渡ってくるところですね。こっちはこの前の一枚。夜のなんばです。奥に白く光っている建物は、南海電車のターミナル。そうでしょう? 結局行くことのなかった遊園地の、地球儀型のモニュメントが写っていたこともありました。ときどきそうして、私とカメラは大阪を視るのです。