2017-10-19から1日間の記事一覧

応募作55

「穴からのぞく者」 大和 陽火 これは、私が経験した恐ろしい話だ。私は、数年前まで休日は、ドライブがてら廃墟の写真を撮りに行っていた。廃墟が特別に好きという訳ではないのだが、どことなく引きつけられる魅力があった。 その日、私は、大阪のとある廃…

応募作54

「大阪では何体か倒したらしいぞ」 最寄ゑ≠ ―闇夜に爛、と赤く耀くのはヤタと呼ばれる斥候の目だった。 白ヶ浜から丘に上がった三つ足の脛長の夷狄どもは瞬く間に熊野の山里を蹂躙し、河内の小集落を易易と平らげ乍ら尚も北上、あっさり降伏を申し出た堺衆と…

応募作53

「ちょうもん」 巌岳 糸子 予定変更になったので、大阪城へ足を向けてみたが、日本語の全く耳に入ってこない天守閣から早々に退散。歩き回る内、人気の少ない一角で友人を見つけた。ただし一人ではない、彼女は誰かと話して、いや、言葉少なに相手の話に聴き…