2017-10-10から1日間の記事一覧

応募作47

「待ち合わせ」 文乃 梅田の地下街を私は走っていた。泉の広場にたどり着いたときには、待ち合わせの時間から三十分が過ぎていた。思ったとおり、まわりを見渡しても彼女の姿はなかった。女はいつも遅れてくるくせに、男が遅れてくると怒る生き物だった。昭…

応募作46

「アーム症候群」 坂本光陽 茨高の大先輩,川端康成は、マジ茨木市の誇りやね。 あれ、ラノベ一辺倒のレイちゃんには、ピンとこうへんか。美しい文体、染みわたる神秘、魅惑の幻想譚。究極のファンタジーやで。そこらのベストセラーより、よっぽど読者の心を…

応募作45

「紅葉の呼び声」 坂本光陽 高校生男子は総じてバカである。僕も例外ではない。 きっかけは新聞記事だった。当時、暴力団の抗争が相次いでいた。記事によると、大阪府警が高槻市北部の山間で死体を捜索中だという。襲撃を受けた暴力団員が壮絶なリンチの末に…

応募作44

「アンフォゲッタブル」 坂本光陽 僕が小学生だった頃の話である。 小さい頃から、淡路、池田、豊中と阪急沿線を転々としてきた。茨木の小学校に転校してきたのは、5年生の三学期である。父親の仕事の都合で、すぐに高槻に引っ越したので、茨木にいたのは実…

応募作43

「呼ぶ声」 文乃 「まゆみぃ~ まゆみぃ~」かすかに聞こえる声を耳にした小学生の真由美は急に元気が出てきた。ベッドから飛び出し、母が帰ってきたのだと玄関に走った。ドアを勢いよく開けたが、そこには母の姿はなく、代わりに暗闇の中から生ぬるい風に乗…

応募作42

「動物園」 貝原 天王寺にある動物園でカバを眺めていたら、一人の男が歩いてきた。 男の肩には大きなフクロウが乗っていた。つい先ほど見てきた鳥の展示エリアにいたような丸顔のフクロウではなく、逆三角形の顔に、黒と金が羽根に斑に混じった、雄々しい一…

応募作41

「粉もん」 長野あき 転勤した同僚の健一を訪ねて、大阪の難波で待ち合わせをした。「修二か。よく来たな。会うのは2年ぶりか?」 腹ばかり膨れ、目がぎょろぎょろと動く健一の姿に、私は内心動揺していた。「長旅で疲れたろ? 飯でも食いに行こう。いい店を…