SUNABAギャラリー賞決定!

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ギャラリーに設置された投票箱に、投票された作品タイトルとコメント全てを掲載いたします。

もし、漏れや間違いがありましたらお知らせください。

 

作品タイトル:「いぬ」筆名:讃備たりあ

作品タイトル:「二度目」吉田葵

作品タイトル:「オチのある話」筆名:とだ直史

作品タイトル「きつねごはん」
筆名:久遠了

 作品タイトル:「占い師」筆名:たなかなつみ

コメント:アメでの選別のアイディアが良かったです。

 

作品タイトル:「初夏の花火」筆名:難波日向

作品タイトル:「十三」筆名:赤月煌

作品タイトル「歯神社」筆名:藤田雅矢

作品タイトル:「帰る 還る」筆名:ササクラ

コメント:不思議なリズムのお話。印象に残った。

 

作品タイトル:「はものかわ」筆名:岩里藁人

コメント:ギャラリーで田辺青蛙さんが「大東去勢中学」との不思議な繋がりについて熱弁していた。

「大東去勢中学」と一緒にそれぞれに一票を投じたい。どちらも読んでいて股間が痛くなる怪作だ!

 

作品タイトル:「夜の太陽」筆名:丘かおる

作品タイトル:「大阪ハロウィーン」筆名:憂鬱宮麗

作品タイトル:「大阪嫌い」筆名:中島鉄

作品タイトル:「あめだま」筆名:梅田雪花

作品タイトル:「あめだま」筆名:藤原可代

作品タイトル:「千日前の首」筆名:秋月優貴子

作品タイトル:「コイウタ」筆名:川澄茜

作品タイトル:「前と後」筆名:岩城裕明

作品タイトル:「幸運のお守り」筆名:矢口慧

作品タイトル:「マキオカブラザーズ」筆名:高家あさひ

作品タイトル:「横丁を抜ける」筆名:君島慧是

コメント:「てのひら怪談」の筆者としてずっと追い続けている人です。君島氏の新作を読めたことに感謝します。

 

作品タイトル:「運転免許をとらない理由」筆名:小野創

コメント:漫画だけれど、良かった。読んでて怖いし、あとで考えてしまう。

コメント:応募規定から外れているけれど、投票してしまいました。

 

作品タイトル:「新地の不思議さん」筆名:中島鉄

コメント:タイトルが好き。もっと長い話向きのネタやったんと違うかな。

 

作品タイトル:「書家の息子」筆名:勝山海百合

コメント:面白い。もう絵が頭の中に浮かんでにやけて、困ってしまう。キレッキレの動き、YouTubeで探してしまいかねない。

 

作品タイトル:「おるねん」筆名:野棘かな

コメント:こわくて、かなしくて、くるしい。

 

作品タイトル:「ひらかた怪談サークル」の怪談。

コメント:初めて怪談を生で聞きました。落語みたいで面白かった。ギャラリーの写真家の人の話も怖かったです。

 

作品タイトル:「巷説・黒蜥蜴」筆名:高家あさひ

コメント:いい。ちょっと「うる星やつら」とか、あれら同時代のホラーにありそうだけど、軽い大阪弁が、内容の辛さをやわらげている気がする。読みやすい!!。

 

作品タイトル:「高所恐怖症」筆名:筆名:司條由伊夏

コメント:面白い。「もう無理。帰る」がリアル。パンフレット眺めたのだろうか。主人公は……?ラスト三文がとても内容を膨らませていると思う。

 

作品タイトル:「ミルキィ」筆名:鳥原和真

コメント:このひとの作品は気持ち悪くて好物です。

 

作品タイトル:「あの日に帰りたい」筆名:剣先あやめ

コメント:あの歌の内容、メロディと相まって、トンネルがいいもののような、悪いもののような、そのどちらでもないような、不思議なカンカク。

 

作品タイトル:「アート作品全て」

コメント:立体作品の見応えがありました。

※投稿者からの希望により、コメントの差し替えを行いました。

 

作品タイトル:「応募作全て」

コメント:同窓会みたいで楽しい!作品で会えるあの人やあの人の名前を探すのも面白かったです。

 

作品タイトル:「東雅夫先生の朗読」

コメント:凄かった!

 

※コメントはなるべく「ママ」で掲載しています。訂正希望がある場合はメールでご連絡下さい。【メールアドレス】osaka_kwaidan@yahoo.co.jp

 

投票数が一番多かった作品は、作品タイトル:「二度目」筆名:吉田葵でした。

次点は、作品タイトル:「いぬ」筆名:讃備たりあ、

三位は次点と一票差で「運転免許をとらない理由」筆名:小野創です。

 

SUNABAギャラリー賞

作品タイトル:「二度目」筆名:吉田葵

 

おめでとうございます。

いよいよ明日は最終日!

「大阪てのひら怪談」の展示は明日15日までです。

SUNABAギャラリーの展示作品の売り上げによって次回開催が決まるのでよろしくお願いします!。

最終日は18時でクローズします。(オープンは14時)

受賞作が気になった方や、投票がまだお済みでない方はお急ぎください。

 

田辺青蛙プロデュース 山下昇平個展「掌中世界 大阪てのひら怪談」2月4日(土)〜15日(水) SUNABAギャラリー

応募作の採点表

今回の選考会は前回と違い、審査員全員が同じ場所に集まって選考会を行うのではなく、一次選考時に、それぞれが点数をつけて採点する形式で行いました。

その時の採点表の一部を公開致します。

  • 5点

「シン・ク・リトル・リトル」筆名:御於紗馬

コメント:怪獣ものの中で一番イメージが広がりました。最後の一文が余計な感じしないのも好きです。

 

「歯の話」筆名:剣先あやめ

コメント:800字以上の因縁が気持ちいい。この外側に追いかけてはいけない話がありそうで…

 

「歯の話」筆名:剣先あやめ

コメント:剣先さんの投稿された話の中では、これが一番怖かったです。

何かよく分からないもやもやしたものと「歯」の繋がりが、読み終えた後も強い余韻を残していました。

 

「歯の話」筆名:剣先あやめ 

コメント:歯の数と重みが実感される演出や、因果のぼかし具合が実にうまい。この方はどの作品も達者でした。

 

「疳の虫」筆名:中野笑理子

コメント:読んでいて、ほろりときてしまった作品。

疳の虫退治、昔出来た人がいたとか、やった人がいたと聞いたことがあります。

方言で書かれた応募作は今回も多くあり、誇張されたような関西弁が多かった中、自然な感じで語り手が方言を使っているところにも好感を持ちました。

 

「おるねん」筆名:野棘かな

コメント:読んでいて色んな意味でキツかったです。これはやるせない。

姑獲鳥っぽい感じも強い印象を受けました。

 

 

「Reflection」筆名:高家あさひ

コメント:ズーム環を回すとざらざらする中古カメラの、うらぶれて荒廃したイメージ。

 そこから心の病で職を失い実家に戻り、中古のカメラを抱えて眠る男の侘しさ、切なさが ラストの「私とカメラは大阪を視るのです」の後ろ向きの安堵につながる。

 

「幸運のお守り」筆名:矢口慧(やぐち・さとり)

コメント:ほのぼのした導入から、クローバーを求めそこへと近づいていくにつれ、それこそ茎を引っ張るとずるずると根がひきだされるようにラストの悲鳴まで連れて行かれる。

 最後一行のリアルさの演出も上手い。

 

「親友の悪戯」筆名:葛本益人

コメント:シリアスな友人の病状に対するかっちりとした描写。

 日常的な怪異(矛盾してるけど)で落とすわけだけれど、その解決もいい。

 いかにもありそうな(でも良く出来たオチの)、実話怪談っぽい作品として完成度が高い。

 

「サヨナラしたいの」筆名:紅侘助 

コメント:都市伝説を使って幽霊と縁を切るアイデアが面白い。焦燥感からクライマックスへ転じる勢いがよく、断絶的な脱出が強く実感させられる。

 

「優先座席」筆名:矢口慧 

コメント:見慣れたピクトの頭がないという恐怖演出が新鮮で効果的。ここで単に幽霊の首が落ちるより遥かに怖い。

 

 

「歯神社」筆名:藤田雅矢

コメント:大阪弁のノリノリなテンポとナンセンス味が出色。

 

「梅田ビッグマン前にて」筆名:寒池笑

コメント:不条理な展開の果てに待ち受けるモノが焼肉の写真というのが、意表を突いて秀逸。

 

「疳の虫」筆名:中野笑理子

コメント:商人の町らしい過去の出来事を、しっとり描いて端正な出来映え。800字の中に様々なドラマをひそめた作品の奥行き!

 

 

  • 4点

「サヨナラしたいの」筆名:紅侘助

コメント:だまされた!

 

 

「お試し」筆名:光原百合

コメント:虚実の皮膜が、語り口の中でたちあらわれ、怪談として捉えることによって現実が輝く。そんな空気をいただきました。

 

 

「片っぽだけの靴」筆名:中島

コメント:何が怖いか?幽霊か人か土地柄か……をおいしくいただきました。

 

「前回」筆名:赤い尻

コメント:大阪から遠い東京でこの話を読んでいるというのに、何者かが私にポケットティッシュを渡してくれそうな、そんな気持ちになってしまいました。

 

「それは心音ではない、電車の音だ。」筆名:国東

コメント:土地のもっている空気を感じさせてくれるビジョンです。他の都市で同じことが起きるとは思えない。

 

「書家の息子」筆名:勝山海百合

コメント: 短い中に先の読めない物語展開が盛りだくさんで、笑いまであってうまい。

 

「疳の虫」筆名:中野笑理子 

コメント:爪から出る糸のような煙が怖く、疳の虫の実体が感じられる。語り口もよく、展開もよい。実際には別の事が起きていたのでは、という含みも感じさせる。

 

「それは心音ではない、電車の音だ。」筆名:国東 

コメント:詩的なグロテスクさ、幻想性が素晴らしい。他の応募作にない作風で、好みだけならこれが一番(大阪感があればもっと)。

 

「お試し」筆名:光原百合 

コメント:アイデアじたいはシンプルなのに、これほど面白く展開させられるとは。柱をぐるぐる巡る二人の、サイレント映画的な映像が浮かんで楽しい。

 

「秘密やで」筆名:寺田虫彦

コメント:一人称の饒舌体が楽しい。

 子供と情けないおっちゃんの会話と関係がまた楽しい。

 禍々しい赤と子供と駄目な大人の幻想。

 

「大坂」筆名:金魚屋

コメント:本当に気持ちの悪い話。

「大阪」はついでのようだけど、大阪と記された葉書の薄ら寒い感じは、この「大阪」という単語と「おおさか」という音にある。

 

「梅田ビッグマン前にて」筆名:寒池 笑(さむち わらい)

コメント:気になるレジ袋の中身の唐突さが素晴らしい。

 その無意味さのため、より実話っぽく感じる。

 

「鋏音」筆名:羽場良日 

コメント:これはもう「菊師」という職業がすべて。

 私は菊人形を知っている世代なので、あの「怖い」人形のイメージと合わさって、もの悲しいラストでじんと来てしまう。

 鋏音という言葉も良い。

 これって造語なのかな。

 辞書では見つからなかったけど。

 

「Reflection」筆名:高家あさひ

コメント:短い文章の中に、どんなカメラでそれを手にした私はどんな人なのかという描写が巧みにしっかりと描かれていました。

不思議で優しく、でもどことなく不気味な感じ内に秘めた怪談だと思います。

 

「カセットテープ」筆名:司城大

コメント:ああ、大阪の人で東京に対してこういうこと言う人いてるなあと思いながら読みました。

カセットテープの怪談はよくあるネタの一つですが、最後の落ちはいい意味で裏切られました。

 

「浮いているもの」筆名:綾野祐介

コメント:最後の1行の落ちにやられました。読んでいて、どうなるんだろうというミステリー調の流れも良かったです。

 

「遺骨仏」筆名:剣先あやめ

コメント:今回、剣先さんの投稿作はどれも力作で読んでいて面白かったです。

ああ、あのお寺だなあと読んでいて思いつつ……。

 

 

「お仁さま」筆名:笛地静恵

コメント:伝奇的なスケールの拡がりに驚かされる。

 

「前と後」筆名:岩城裕明

コメント:虚を突かれる幕切れの切れ味。一気に世界が逆転する爽快感。

 

「コンコースの天使」筆名:石動さや加

コメント:今は亡き阪急コンコースの雰囲気と、スローモーション映像のような、ささやかな奇蹟の描写。

 

「横丁を抜ける」筆名:君島慧是

コメント:大阪の盛り場の混沌を鮮やかに切り取る、とんがった文体!

 

 

 

 

  • 3点

 

「西中島0番地」筆名:オキシタケヒコ

コメント:日常の中で、きっとこういうシーンとすれ違ってる。

 

「西中島0番地」筆名:オキシタケヒコ

コメントぞわぞわと忍び寄るような不穏な雰囲気がずっと付きまとう作品。

怪談実話でもありそうな話の流れが面白かったです

 

「西中島0番地」筆名:オキシタケヒコ

コメント:端正な怪談。

これを冒頭に長編ホラーが出来そうな雰囲気。

 

「コートの手」筆名:松岡永子

コメント:古着のもってる得体の知れなさと、人の得体の知れなさがともにあって楽しい。

 

「おるねん」筆名:野棘かな

コメント:静かに迫ってくることは、怖い。

 

「仮眠室」筆名:日野光里

コメント:残響のような怪異はいつまで響き続けるのだろう。

 

予知夢」筆名:平岡真澄

コメント:友情とは時にひねくれて愉快で悲しいものなのだなあ。

 

「みささぎ」筆名:笛地静恵

コメント:こういう文体と流れの話が個人的にはとても好きです。

最後の飛ぶところが読んでいて自分もふわっと体が軽くなったような気がしました。

 

「はなのようなる」筆名:紅侘助

コメント:歴史ネタの怪談は今回も多かったですが、題材に振り回されて消化不良なものがある中、これは800文字の範囲でキチッと収まっており、

怪談としてネタも昇華されているように感じました。

 

「うにたま丼」筆名:剣先あおり

コメント:食べ物ネタは今回も多かったですね。でもこれは違っていてその中でも異色。

落ちがやや予想出来たことと、大阪との関連が弱いかなあ?と思いましたが、美味しそうな「うにたま丼」と、謎めいたおばちゃんの書き方がいいなと感じました。

 

「うにたま丼」筆名:剣先あおり

コメント:怪異のグロテスクな正体と、ユーモラスな雰囲気の相性の良さ

 

「鋏音」筆名:羽揚良日

コメント:実際、菊人形の終焉は職人の高齢化等が理由だったので、こういうこともあるかもなあと読んでいて感じました。

擬音の「ちゃん、ちゃん」っていうのもいいですね。

音と香りが感じられる、とても素敵な怪談でした。

 

「プライド」筆名:司條由伊夏

コメント:単純に大阪観光的な引用じゃない、精神性をネタにした最も「大阪らしい」作品。

前半のライトな感じも、オチの面白さを引き立てる。

 

「夏まつり」筆名:遠藤由実子(えんどう ゆみこ)

コメント手慣れた感じの祭の説明から、不穏な黒い狐面の登場と、オチ。ラストの演出まで、良く出来た怪談。

 

「それは心音ではない、電車の音だ。」筆名:国東

コメント:気持ちの良いリズムと、センスの良い単語の選び方。

血生臭い幻想譚として好みです。

 

「帰る 環る」筆名:ササクラ 

コメント:最後は物足りないが、大婆についてのあれこれが流れるように語られ、親族の濃密な雰囲気がとてもよい。ラジオのむぅむぅという音が好き。「二百忌」を少し思い出した 。

 

「梅田生首謌」筆名:山下鏡馬 

コメント:語感とリズムがすばらしい。

 

「占い師」筆名:たなかなつみ

コメント:ありがちな飴の話かと思いきや急展開がうまい。牧野作品を思い出させるような。

 

「境界にて」 筆名:中森臨時 

コメント:自殺し続ける生霊というのは新しいのでは。映像が目に浮かぶ。

 

「ゆれる」筆名:蒔野さくら 

コメント:おおきな怪異は起きてないのに、端正な語り口で読ませる。風の抜けるイメージが印象的で、家に溜まっていく気配が後を引く。

 

「前回」筆名:赤い尻

コメント:大阪てのひら実話(笑)。大都会の雑踏で遭遇する小さな不思議にヒヤリ。

 

「くび」筆名:大前粟生

コメント:いかにも大阪的なコテコテの独白体が、次第に妖気と狂気と凶気を孕んでゆく。

 

「オクラの座」筆名:馬見女

コメント:オクラの上の大阪城というミニアチュールな幻想の不意打ち感。

 

「水棲」筆名:大庭くだもの

コメント:ちょっとオブライエンの「金剛石のレンズ」を思わせる。冒頭の一句が秀逸。

 

「マンホールからこんにちは」筆名:むねすけ

コメント:太陽の塔ネタの中では、これが最もバカバカしくも印象に残った。コドモ太陽の塔のフィギュア化希望。

 

 

  • 2点

 

「梅田生首謌」筆名:山下鏡馬

コメント:不思議な今と昔の交錯がいいなあ。

 

「向かい側のホームのベンチに」筆名:佐々木土下座衛門

コメント:なんとなくの状況説明が全て怪異が身近に迫ってくるための布石になっていて怖い。

 

「津久野の思い出」筆名:籠三蔵

コメント:怪異談蒐集家ってのはホントにもう…

 

「秘密やで」筆名:寺田虫彦

コメント:最後の一行に思わせるモノあり。大阪のトトロ的な感じでしょうか?!

 

「質問メール」筆名:柯南

コメント:その花は押入れ桜っていうんですよ。

 

「まぼろし」筆名:佐多椋

コメント:同じような恨みがあちこちにあるのでしょうか、おおさかには。

 

「しゃべらない」筆名:波木鱗樟

コメント:東京弁の土地に住む者としてなんだか背後に誰かいるような気にさせられてしまいました。

 

「疳の虫」筆名:中野笑理子

コメント:隣の怪異という感じ、好きです。

 

「渦」筆名:春南灯

コメント:とある場所……是非みてみたいものです。

 

「黄楊の阿舎」筆名:君島慧是

コメント:視点が大きく小さくくるくると変わるさまは、まさに根付のような800字でした。

 

「お仁さま」筆名:笛地静恵 

コメント:夢野久作的でよい。

 

「うにたま丼」筆名:剣先あおり 

コメント:たまごの正体の不気味さが印象に残る。

 

「夏の木々を照らす日光」筆名:百句鳥 

コメント:文章が端正で読ませる。

 

「鳴き声のする風景」筆名:百句鳥 

コメント:猫の鳴き声の幻聴が消えないのは怖い。

 

「うから」筆名:矢口慧 

コメント:美しくグロテスクな映像が鮮やかに浮かぶ。もう少し文章の整理が必要。

 

「プライド」筆名:司條由伊夏 

コメント:大阪人なら面白い話ができるだろうと言われがちな悩みを、軽妙に扱っていて面白い。死んだからといって笑ってあげられない大阪の厳しさ。

 

「くび」筆名:大前粟生 

コメント:金棒のぶつぶつのあたりの文章がよい。

 

「遺骨仏」筆名:剣先あやめ 

コメント:文章のよさ。死んだ後にも世俗の煩わしさにつきまとわれる可能性にはっとさせられる。

 

「あの日に帰りたい」筆名:剣先あやめ 

コメント:最初から輝かしい未来を持ちえた時代を知らず、そこに戻ることもできない世代のやりきれなさがよい。

 

「十三」筆名:赤月煌 

コメント:禍々しい空間の拡がりを体感させられた。

 

「赤備え」筆名:ひろしとみどり 

コメント:シックス・センス叙述トリックが面白い。文章に整理が必要。

 

「名物録――またの名を食い倒れストラット」筆名:君島慧是 

コメント:大阪の食のごった煮感がよく出ている。リズム感がよい。

 

「ドサカ府ど抗争」筆名:笛地静恵

コメント:ニンジャスレイヤーっぽい何か違うB級感溢れる世界観が楽しい。

>「アンタア、ユルサヘンデエ!」彼女は日本語で答えている。《ド抗争》に詳しい。審査員は、これに弱い。研究している。強敵だ。

の1文が好きです。

 

「マキオカブラザーズ」筆名:高家あさひ

コメント:田中啓文さんの作品を読んでいて連想してしまいました。最後の1文でクスリと笑ってしまいました。

 

「敏っしゃん」筆名:剣先あおり

実際にありそうな話の流れで面白かった。確かにいるよねこういう人っていう雰囲気もとてもよかったです。

怪談会の怪で、もう少し落ちに捻りが欲しかったかも。

 

「サヨナラしたいの」筆名:紅侘助

コメント:「はなのようなる」も好きだったけれど、こちらも良かったです。

800文字の長さを書きなれた人による作品だなと感じました。

 

コイウタ」川澄茜

コメント:黒髪と怪談は相性がいい組み合わせだなあと再確認。

 

「獣の匂い」筆名:ひろみつ

コメント:タクシーという空間で、こういう目にあったら本当に怖くてすごく嫌だろうなと思います。

 

「片っぽだけの靴」筆名:中島鉄

コメント:ありがちな「怖い話」だが、軽妙な語り口で楽しく読ませる。

 

「5●1」筆名:暮木椎哉

コメント:妖怪っぽい正体のわけのわからなさが効果的。

 

「数えたらあかん」筆名:青山藍明

コメント:怪談というか都市伝説的な感じ。

雰囲気が良いし、このサイズが怪談に手頃。

 

「幸運の神様」筆名:上半身人魚

コメント:えっ、どんな写真だったんだろう、って思わせたら勝ち。

電話を使った怪談としても面白い。

 

「はものかわ」筆名:岩里藁人

コメント:からみつくような、この無気味さよ。

 

「エイコ」筆名:宮崎慎也

コメント:談としては秀逸だが大阪性に欠けるのが惜しい。

 

「ミルキィ」筆名:鳥原和真

コメント:「飴ちゃん」ネタで最も強烈な読後感。

 

「双子取り」筆名:金剛千花

コメント:これも大阪性に欠けるのが残念。

 

「婆々畳」筆名:宮崎慎也

コメント:大阪城妖怪談として端正な仕上がり。

 

「書家の息子」筆名:勝山海百合

コメント:安定の海百合節だが大阪性と物語の絡みがやや弱い。

 

「マーキング」筆名:金魚屋

コメント:この忌まわしい感じは得がたいが、大阪性との絡みが……。

 

「髪飾り」筆名:早高叶

コメント:ほのぼの系で美しい出来映え。

 

「浮いているもの」筆名:綾野祐介

コメント:ラストの意外性!

 

中崎町の妖怪文庫」筆名:海音寺ジョー

コメント:この雰囲気は好ましい。

 

「ゆれる」筆名:蒔野さくら

コメント:地霊の囁きを描いて手堅い出来。

 

「エスカレーター、怖い、」筆名:中島麻美

コメント:怪談としての落とし込みは上手。

 

「渦」筆名:春南灯

コメント:実話として秀逸だが大阪でなくても成り立つのが……。

 

「遠足の思い出」筆名:日野光里

コメント:不思議なテイストで好印象だが大阪性の点で難あり。

 

「西中島0番地」筆名:オキシタケヒコ 

コメント:霊界がこの世と地続きらしいのがよい。そこに入れてもらえない男の存在が、霊界より不気味で気になる。

 

 

第二回「大阪てのひら怪談」田辺青蛙賞受賞作品

作品タイトル:浮いているもの 
筆名:綾野祐介

 

今年は頻繁に豪雨に見舞われ、あちらこちらで河川は氾濫し大きな被害が出ていた。

 幸いなことに大阪の中心を流れる淀川は氾濫こそしなかったが上流である桂川が氾濫してしまった。その日の少し後のこと。私は普
段から一人で訪れている海遊館に居た。海岸からは観光船が出ている。別に乗るつもりもなかったのだが、その辺りを散策していた平日の昼間、人もそれほど居ない岸壁でサンタマリアや増水の所為で色々なものが打ち付けられているのを何となく眺めていた。
 ふと波間に何か浮き沈みしていることに気付いた。少し遠くてよく判らないので近づいて身を乗り出し確認してみた。やはり何かが浮き沈みしているようだ。しばらく、それが何だろうかと考えていると不意に脳裏にある答えが浮かんだ。そう思って見てみると最早それにしか見えない。「人間の頭部」だ。
 マネキンだと思おうとするが、どう見ても本物のようだ。私は警察に通報しなければ、と視線を外した。そうすると、今度はまた少
し離れたところにもっと大きなものが浮き沈みしているのが見えた。こっちは胴体だ。本格的に通報の必要が出てきたが周りを見回しても他には人がいない。私が判断しなければならない。そうだ、海遊館の係員か観光船の乗組員を探そうと思ったとき変なことに気付
いた。頭部が浮いていて少し離れて胴体が浮いている。しかし、よく見るとそれらが何か白いもので繋がっているように見える。
「何だ、あれは?」
 4mほどは離れて浮いている頭部と胴体は
確かに繋がっていた。頭部と胴体を繋ぐ白いもの、それは、、、、、長い長い首だった。

第二回「大阪てのひら怪談」山下昇平賞受賞作品

作品タイトル:黄楊の阿舎 
筆名:君島慧是

 まだパトロンめいた気質の残っていた、明治か大正期の大阪商人が造らせたと云われる。
 銘は小さく、建物の土台に《光重》が読める。似た名は幾つもあるが、この名前はあまり聞かないと、根付に詳しい人も云う。ともかくあの腕は、市井むきというより、京都の宮廷文化に心血を注いだ工芸師のそれを思わせると指摘する者がある。天王寺公園で桜の頃に見たという話があるが、ほんの一時期でも、美術館にあったという記録はない。
 極小の黄楊の館、単純に中国風とも云いきれない屋敷は、西欧の館を夢想して誤解したのか、石積みの土台に浮彫のある柱を挟んで縁側とも露台ともとれる開口部から、屋内の居間や書斎を横切り、母屋と太鼓橋で繋がるさきに阿舎がある。この居間越しに臨む阿舎に水盤があり、水盤の直径の半分ほどの身長の髷の人物が、興味深そうに腰を曲げて水盤を覗いている。この月見盤と呼ばれる水盤に、銀色の水が溜まっているのが、母屋の居間越しにわかる。根付を揺らすと水も揺れる。後ろ手に腰に手を乗せて覗きこむ人物も、水面にさぞ驚いているだろうと窺われる。
 あるとき、黄楊の彫刻の人物がいただけの阿舎の床に、小さな角のような突起が生えたという。人物は床を突き破って生えた筍を見るような塩梅だった。だが突起は横に広がり、薄い壁を築いた浅い水盤になり、銀の水を溜めた。斜から光をあてると、青銀めいた水の反射が阿舎の天井に映る。そこを淡い尾ひれの極小の金魚の影が、薄絹の尾をさやさや震わせ、光でできた月の海を横切って泳ぐのが見える。鏡で調べると、水盤には南の海の夜光貝が貼られていた。かつて大阪には、京の宮廷文化を、商人の市井文化の勢いで鍛錬を積んだ職人がいた。彼らの多くは実に控えめで、黙々と己が作品に打ちこんだという。水も零れる。平らに置いて、しばらくするとまた水が溜まっている。根付に耳をあてると、こんこんさやさや水の微かに溜まる音がする。

 

第二回「大阪てのひら怪談」東雅夫賞受賞作品

作品タイトル:お仁さま 

筆名:笛地静恵

 

 お仁さまは、ふたりでひとりです。一つのからだに、二つの頭があります。人形のようにきれいな顔をされています。まっくら闇の中でも、まつげまではっきりと見えます。おからだ自体が、ほのかに白く光をはなっているのです。

 わたくしは、お仁さまと、この地下の部屋にとじこめられております。お仁さまが飲まれたお乳の回数からすると、三日は過ぎています。一日に、三度の授乳がなされる習慣です。しかし、まだ助けはきません。残してきた、子どもたちのことを考えると、気がおかしくなります。五月に美濃をおそった大きな地震が、ついに大阪の土地にも来たのです。

 地下の正五角形の部屋は、堅固に作られています。欅の尺角の五本柱も、まったく狂いを見せていません。ここを作ったというお坊様の法力が、まだ働いているのでしょう。人間が掘った通路の方は、つぶれて土に埋まっています。どこからか、新しい空気がかよってきます。十丈はある地下です。不思議のしかけがあるのでしょう。

 しかし、それも、もうそんなに長くは、もたないのではないでしょうか。さっきの大きな揺れのときには、座敷牢の格天井から土がふってきました。豪華な螺鈿の壁にも割れ目が入っています。

 お仁さまが、目をさまされるときが、この土地と一族の終わりだ。そう旅の僧は、言い残されていったそうです。だから、代々の一族は、お仁さまを守り育ててきたのです。わたくしは乳母としてやとわれました。水しか口にしていません。お仁さまは、一回に二人分のお乳を、吸いとっていかれます。わたくしのお乳も、切れかけております。次に出るかどうか、もう自信がありません。前のときも、量が少なかったはずです。牢がきしみました。悲鳴をあげています。お仁さまが、ふたりとも目をさまされました。その瞳は火だったのです。

第二回「大阪てのひら怪談」酉島伝法賞受賞作品

作品タイトル:優先座席 
筆名:矢口さとり

「お兄ちゃん、あんた何処まで乗ってくん?」
 混み合う電車の中でも、大阪のおばちゃんの声はよく響く。
 地声がでかいのもあるが、あの独特のイントネーションと、周囲の人間全てが聴衆であるかのような自信に満ちたテノール寸前は、強引に聴覚に押し入ってくる。
 それを拒めた試しはなく、今も車内の騒めきや線路の音も全て無視し、一方的と思しき会話は背後から響いていた。
「あっらー、えらい遠まで行くんやないの! そんなんやったらうちが座っとったらあかんやん、ええから座り座り! おばちゃんもう降りるさかいに誰かに取られるくらいやったらお兄ちゃんが座ってしまいないな! 怪我しとるんやし! 知っとったか? 1円拾ったら人に席を譲ってもらえるだけの運を拾ったことになんねんて! お兄ちゃんそんだけの運はあるんやから心配することなんもないって! 六文の心配どころやないやん! せや、先も長そやし、飴ちゃんあげよか! ええのええの、遠慮したらあかんて、十万億土やもんなぁ、ほんま遠いわなぁ、あ、おばちゃんもうここで降りるでほなな! 元気でな!」
 停車と同時、乗降口に押し出される人と共に、騒がしい声は遠のいていく。
 乗客が減れば、いつもの癖で空席はないかと周囲を見回し、人と人との隙間に、ぽかりと一人分、座席が空いているのに気付いた。
 近くの人間が、腰を下ろす様子はない。
 これ幸いと、空席の前に移動してから、カラフルなピクトグラムがプリントされた座面に、優先座席だと気付く。
 濃紺の生地に青色の妊婦や緑の老人、赤い親子が、等間隔に配置された座面の上に。
 黒飴が一つ、置かれていた。
 その真上、右足に包帯を巻き、怪我人の姿を模した黄色い人型には、何故だか、首がなかった。